「課題解決企業への挑戦」
時代と共に変化しながら、印刷会社として培った知見や経験を活かしていく。
プロローグは「プロジェクトC」。
お客様と共に、地域と共に、私たちの歩みは続きます。
ゆったりとした語り口、恵比須様を思わせる柔和な笑顔で顧客の懐にすっと入り、大きな受注を引き出す営業巧者・林勇作。印刷営業で30年のキャリアを持ち、専務取締役として営業部隊を後方支援する。旧態依然のスタイルからの脱却を目指して挑戦を続ける。
創業以来、販促チラシや各種広告、観光パンフレット等、王道ともいえる印刷物を長年手掛けてきた当社営業部。顧客が印刷物を必要とすれば訪問し、内容を打合せして制作担当につなぐ「受け身の営業」が業界の常だった。そうした営業活動の中でも、「こんな広告が作りたいけれど、これだけの予算で作れますか?」とか「作りたいものはあるけれど、どのように発注すればよいのかわからない」という相談を受けることは再々あったという。
そんな顧客の悩みを聞き、希望を叶えてあげたいという思いから今回のプロジェクトはスタートした。「自己資金がない起業家や個人ショップなどに向け、仮に予算30万円ならこれだけの物が作れますよ。それで作りましょう」という提案をする。たとえば起業に必要な販促チラシやショップカード、封筒、領収書、名刺といった印刷物のパッケージを30万円、40万円、50万円コースに設定し、お客様の予算や自己資金に応じて丸ごと請け負うというのが最大のウリだ。
ネーミングは、昭和の頃流行ったテレビ番組の「のぞみ(望み)、かなえ(叶え)、たまえ(給え)」にあやかって「叶ちゃんプロジェクト」と命名。「何より覚えてもらいやすいし話のタネにもなりやすい。面白いんとちゃう?って。しゃれみたいなものです」と林は飄々と笑う。お客様の予算を先に聞いて提案できるうえ、見積りも明朗だ。
プロジェクトを進めるにあたっての問題は多々あった。「印刷業界はそもそも受注産業なので、新商品を引っ提げて顧客を訪問するケースはめったにないんです。お客さんにしても、注文がある時だけ来てほしいわけです。けれど、いつまでも「待ち」の姿勢では、きっと行き詰まるという危機感はありました」。
また、「ポッキリ」の価格を提示するには、どうしてもコストやクオリティの問題が発生する。上質で、安く提供するために、どこでコストダウンを図るかなど、社内で検討が続いた。たとえば紙ベースでは金額内に収めるのが難しくても、デジタルコンテンツを折り込んでいけば、コストを抑えることも可能だ。「お客様にとって最善のサービスを提供するためには、部署を超えての連携もどんどん進めたい」と林は考える。
「新サービスを提案するといっても、お客様の課題解決につながらなければ意味がありません。それ以前に信頼関係が築けていないと、社内の悩みや困りごとについて腹を割って話してももらえないでしょう。やはり顧客の課題を探るためには、人間関係の積み重ねが必要。それは時代が変わっても不変だと思うんです。昭和の頃は義理人情や「信用の貸し借り」みたいな呼吸もありましたが、「今」のアプローチ方法を個々に考えてチャレンジしていかなければ」と力を込める。